Trastuzumab

エビデンスレベル: L4 予測適応症: 10 件

目次

  1. Trastuzumab
  2. トラスツズマブ:HER2陽性乳癌から正常乳房様サブタイプ乳癌へ
    1. 一言要約
    2. クイック概要
    3. この予測が妥当である理由
    4. 臨床試験エビデンス
    5. 文献エビデンス
    6. 日本市販情報
    7. 細胞毒性
    8. 安全性に関する考慮事項
    9. 結論と次のステップ
    10. 免責事項

## 薬剤師評価レポート

トラスツズマブ:HER2陽性乳癌から正常乳房様サブタイプ乳癌へ

一言要約

トラスツズマブは抗 HER2 モノクローナル抗体で、HER2 陽性乳癌の治療に使われてきた薬です。日本ではハーセプチン注射用として市販されています。 TxGNN モデルは正常乳房様サブタイプ乳癌 (normal breast-like subtype of breast carcinoma) に有効である可能性を予測しています。現在 13 件の臨床試験と 1 編の文献が関連していますが、このサブタイプを直接対象にした研究はなく、エビデンスは限定的です。

クイック概要

項目 内容
予測新規適応症 正常乳房様サブタイプ乳癌 (normal breast-like subtype of breast carcinoma)
TxGNN 予測スコア 99.90%
エビデンスレベル L4
日本市販状況 ✓ 市販中
承認番号数 2 件
推奨決定 Hold

日本の承認適応症のテキストは、今回のデータには含まれていません。

この予測が妥当である理由

現在、詳細な作用機序データ(DrugBank)はありません。既知の情報によると、トラスツズマブは HER2 の細胞外ドメインに結合してシグナル伝達を遮断し、抗体依存性細胞傷害 (ADCC) を誘導します。HER2 陽性乳癌での有効性は確立されています。

正常乳房様サブタイプは、乳癌の遺伝子発現に基づく分類の一つです。このサブタイプは通常 HER2 低発現または陰性です。そのため、効果が期待できるのは HER2 増幅がある場合に限られ、サブタイプそのものに対する効果とは言いにくい状況です。乳癌という共通点から機序的に適用の余地はありますが、根拠は間接的です。

臨床試験エビデンス

このサブタイプを直接対象にした試験はなく、いずれも HER2 陽性乳癌や関連薬(ADC など)を扱う広い乳癌集団の試験です。関連度の高い順に 10 件を示します。

試験番号 フェーズ 状態 被験者数 主な知見
NCT01796197 Phase 2 完了 23 炎症性乳癌の術前療法としてパクリタキセル+トラスツズマブ+ペルツズマブを評価。正常乳房様サブタイプは対象外
NCT04759248 Phase 2 進行中(募集終了) 55 ER 陰性または PAM50 非ルミナル型の HER2 陽性進行乳癌に対するアテゾリズマブ+トラスツズマブ+ビノレルビン。対象サブタイプは近いが、母集団が広い
NCT06328387 Phase 1/2 不明 120 進行乳癌でヒドロキシクロロキン+抗体薬物複合体 (ADC) を ADC 単独と比較
NCT06348134 Phase 2 募集中 74 ナイジェリア人女性の HER2 陽性乳癌に対する術前・術後の抗 HER2 療法
NCT05659056 Phase 2 不明 65 HER2 陽性早期・局所進行乳癌でピロチニブ+トラスツズマブ+nab-パクリタキセルの術前療法
NCT07669610 Phase 3 募集前 140 Basal-like 免疫抑制型トリプルネガティブ乳癌でトラスツズマブ ルボテカン±ベバシズマブ。関連 ADC で、未開始
NCT06585969 Phase 3 中止(登録 0) 0 非ルミナル A 型・ER 陽性・HER2 低発現でトラスツズマブ デルクステカンと CDK4/6 阻害薬を比較。登録がなくデータなし
NCT05582499 Phase 2 募集中 716 手術可能乳癌の術前療法を扱う精密医療プラットフォーム試験。サブタイプ別の関連性は未確立
NCT03168880 Phase 3 進行中(募集終了) 720 トリプルネガティブ乳癌でパクリタキセル±カルボプラチン。HER2 陰性が対象で、トラスツズマブの役割は未確認
NCT04750122 Phase 1/2 募集中 46 患者由来腫瘍様細胞クラスターの薬剤スクリーニングに基づく HER2 陽性乳癌の術前療法。間接的・探索的な位置づけ

完了した Phase 3 RCT はなく、このサブタイプでの有効性を示す直接的な結果は得られていません。

文献エビデンス

PMID 年 タイプ ジャーナル 主な知見
19466513 2009 Case series Breast Cancer (Tokyo) 乳癌の固有サブタイプ(ルミナル A/B、正常乳房様、HER2 過剰発現、basal-like)を整理し、basal-like 型の細胞診上の形態学的特徴を報告。トラスツズマブの効果は検討していない

日本市販情報

承認番号 商品名 剤形
629921901 ハーセプチン注射用60 60mg 注射用60 60mg
629922001 ハーセプチン注射用150 150mg 注射用150 150mg

細胞毒性

以下は薬物分類に基づく一般的な整理です。DrugBank の toxicity データは今回ありません。

項目 内容
細胞毒性分類 分子標的薬(抗 HER2 モノクローナル抗体)
骨髄抑制リスク 低(単剤の場合。化学療法併用時は併用薬の影響が加わる)
催吐性分類 低
モニタリング項目 心機能(LVEF など)、CBC(化学療法併用時)
取り扱い防護 添付文書および施設の抗がん薬取り扱い規程を参照してください

心毒性は重要な懸念事項です。文献 40973900 は、ホルモン受容体発現の低さやベースラインの QT 延長がトラスツズマブ関連心毒性と関連すると報告しています。

安全性に関する考慮事項

安全性情報については添付文書を参照してください。

結論と次のステップ

決定:Hold

理由:

  • このサブタイプを直接対象にした試験や文献がなく、正常乳房様サブタイプは通常 HER2 陰性・低発現のため、機序的にも効果は HER2 増幅例に限られる可能性が高い状況です。
  • 添付文書の警告・禁忌が未取得で、安全性スクリーニングに進めません。

なお、同じ予測リストの HR 陽性乳癌(PR 陽性・PR 陰性・ルミナル A/B)は、HER2 陽性例を中心に Phase 2/3 試験が多く、L2 相当の評価です。再利用の優先候補はそちらのほうが有望です。

進める場合に必要なもの:

  • PMDA 添付文書(警告・禁忌・相互作用)の取得と解析
  • DrugBank からの作用機序 (MOA) データの補完
  • 正常乳房様サブタイプでの HER2 発現状況の確認と、HER2 陽性例に限定した試験データの整理
  • 心機能モニタリング計画の策定

    免責事項

本コンテンツは研究目的のみであり、医療アドバイスを構成するものではありません。 臨床応用の前に臨床的検証が必要です。



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