Metoclopramide
| エビデンスレベル: L5 | 予測適応症: 10 件 |
目次
## 薬剤師評価レポート
メトクロプラミド:胃・十二指腸潰瘍 から 胃潰瘍 へ
一言要約
メトクロプラミドはドパミン D2 受容体拮抗薬で、制吐薬・消化管運動改善薬として日本で市販されています。 TxGNN モデルは胃潰瘍 (gastric ulcer) に有効である可能性を予測しています(スコア 99.93%)。 関連する臨床試験は 2 件、文献は 20 編ありますが、潰瘍治療を直接検証した質の高い試験はなく、動物実験と総説が中心です。
クイック概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 既存適応症 | 胃・十二指腸潰瘍(日本の承認情報の記載。分類は制吐薬、消化管運動改善薬、ドパミン D2 受容体拮抗薬) |
| 予測新規適応症 | 胃潰瘍 (gastric ulcer) |
| TxGNN 予測スコア | 99.93% |
| エビデンスレベル | L4(前臨床・機序研究のみ) |
| 日本市販状況 | ✓ 市販中 |
| 承認番号数 | 13 件 |
| 推奨決定 | Hold |
注意:日本の承認情報には「胃・十二指腸潰瘍」がすでに記載されています。この予測は、既存の記載を追認するものか、新規の適応拡大なのかを整理する必要があります。
この予測が妥当である理由
現在、詳細な作用機序データ(DrugBank の MOA)は取得できていません。既知の情報によると、メトクロプラミドはドパミン D2 拮抗作用と 5-HT4 刺激作用を持つ消化管運動促進薬で、胃排出を促進します。
潰瘍そのものを治す作用は確立していません。潰瘍の根本原因は酸分泌や粘膜防御の破綻で、メトクロプラミドは主にそれを補う立場です。動物実験では、アスピリン誘発およびピロルス結紮モデルで潰瘍保護効果が報告されました。モルモットのモデルでは、酸分泌を変えずに胃内容排出の促進と幽門逆流の抑制で保護作用を示した可能性があります。ただし結果は一貫せず、機序的な結びつきは間接的です。
臨床試験エビデンス
| 試験番号 | フェーズ | 状態 | 被験者数 | 主な知見 |
|---|---|---|---|---|
| NCT05746377 | Phase 4 | 不明 | 60 | 上部消化管出血の内視鏡前投与で、再内視鏡や視野改善を評価する二重盲検 RCT。潰瘍治療そのものは検証していない(関連度 B) |
| NCT03747107 | N/A | 完了 | 19 | 英国プライマリケアでの薬剤師主導の処方安全性改善プログラム。メトクロプラミドや胃潰瘍との明確な関連なし(関連度 C) |
文献エビデンス
| PMID | 年 | タイプ | ジャーナル | 主な知見 |
|---|---|---|---|---|
| 16807979 | 2006 | RCT | Yonsei Med J | 日帰り手術で、静注メトクロプラミドとラニチジンの併用が術前の胃内容に与える影響を評価(潰瘍患者ではない) |
| 19225 | 1977 | Review | Drugs | 胃・十二指腸潰瘍の薬物療法の総説(抄録なし、タイトルによる) |
| 6336644 | 1983 | Review | Ann Intern Med | メトクロプラミドの薬理と臨床応用。制吐作用と消化管運動促進作用を整理 |
| 797497 | 1976 | Review | Clin Pharmacokinet | 胃潰瘍などによる胃排出の変化と、経口薬吸収への影響 |
| 2730234 | 1989 | 動物実験 | Arch Int Pharmacodyn Ther | ラットで、アスピリン誘発およびピロルス結紮モデルの潰瘍に保護・抗分泌作用を示した |
| 6436177 | 1984 | 動物実験 | Indian J Physiol Pharmacol | モルモットの 3 種の潰瘍モデルで保護作用。酸分泌は変えず、胃排出促進と逆流抑制が機序と推測 |
| 28652516 | 2017 | 動物実験 | J Smooth Muscle Res | ラットの酢酸潰瘍モデルで、潰瘍部位と胃排出、促進薬の影響を検討 |
| 4779253 | 1973 | 未分類 | Curr Med Res Opin | 胃潰瘍での胆汁逆流に対する喫煙、メトクロプラミド、カルベノキソロンの影響(抄録なし) |
| 775822 | 1976 | 未分類 | ZFA | メトクロプラミドによる胃・十二指腸潰瘍の治療(抄録なし、タイトルによる) |
| 6782467 | 1981 | 未分類 | MMW | 健常成人 12 名で、メトクロプラミドは血清ガストリンと胃酸分泌を有意に変えなかった |
日本市販情報
| 承認番号 | 商品名 | 剤形 | 承認適応症 |
|---|---|---|---|
| 670006099 | プリンペラン細粒2%(選) | 細粒2%(選) | 胃・十二指腸潰瘍(制吐薬、消化管運動改善薬、ドパミン D2 受容体拮抗薬) |
| 620006099 | プリンペラン細粒2% | 細粒2% | 胃・十二指腸潰瘍(同上) |
| 620006100 | プリンペラン錠5 5mg | 錠5 5mg | 胃・十二指腸潰瘍(同上) |
| 620499905 | メトクロプラミド細粒2%「ツルハラ」 | 細粒2%「ツルハラ」 | 胃・十二指腸潰瘍(同上) |
| 620500705 | メトクロプラミド錠5mg「NIG」 | 錠5mg「NIG」 | 胃・十二指腸潰瘍(同上) |
承認は全 13 件あり、上記は主要な 5 件です。剤形には錠剤、細粒、シロップ、注射液があります。
安全性に関する考慮事項
安全性情報については添付文書を参照してください。
結論と次のステップ
決定:Hold
理由:
- 潰瘍治療を直接検証したヒトの RCT がなく、根拠は動物実験と総説が中心(L4)で、機序的な結びつきも間接的です。
- 日本の承認情報にはすでに胃・十二指腸潰瘍の記載があります。加えて、添付文書の警告・禁忌が未取得(Blocking)のため、安全性の評価に進めません。
進める場合に必要なもの:
- PMDA の添付文書(警告、禁忌、効能・効果の正確な文言)の取得と解析
- 詳細な作用機序データ(DrugBank)の補完
- 既存の承認範囲と予測適応症との差分整理
- 潰瘍治療そのものを評価するヒト対象の対照試験の有無の再調査
本結果は研究参考であり、医療上の助言ではありません。臨床応用には別途の臨床的検証が必要です。
免責事項
本コンテンツは研究目的のみであり、医療アドバイスを構成するものではありません。 臨床応用の前に臨床的検証が必要です。